脊椎とは一般には背骨と呼ばれる部分で、具体的には頸椎~尾椎(胸椎、腰椎、仙椎が含まれる)の部分を言いますが、これらで発生する症状や病気に関しては総称して脊椎疾患と言います。

脊椎の中心には脊柱管があって、その中には脊髄や馬尾神経といった神経が通っています。その神経が作用することで脳からの命令に沿って手足を動かせる、あるいは手などに伝わった感覚を脳にフィードバックすることができるようになるほか、排便や排尿のコントロールについてもこの神経は関わっています。このように脊椎は、人体にある部位の中でも重要な役割を担っているわけですが、当院ではこの脊椎で起きた外傷や病気などについての診療も行っています。

主な脊椎疾患としては、交通事故によるむち打ち症(頸椎捻挫)をはじめ、椎間板ヘルニア(主に頚椎、腰椎)、脊柱管狭窄症、腰椎分離症、頸椎症といったものです。診察の結果、脊椎疾患との診断を受けた場合、適切とされる治療法(牽引療法、理学療法、温熱療法、薬物療法、装具療法 など)を行っていきますが、入院しての手術や、高度医療機器を用いた検査や治療が必要という場合は、当院の提携先でもある総合病院や専門の医療機関を紹介していきます。

主な脊椎疾患

頸椎捻挫

交通事故やスポーツ中に不意な衝撃を頸部に受け、首の筋肉に負担がかかったことで筋肉痛と同様の痛みがある状態を頸椎捻挫と言います。人によっては、激痛のあまり首を回すことができないということもあります。同疾患は、交通事故でよくみられるとされていますが、この場合は追突発生時の過度な頚椎の伸展、そして過度な屈曲によって起こるとされています(外傷性頸部症候群と呼ばれることもあります)。

よく見受けられる症状は、頸部の痛みとしびれ、頭痛、首の可動域制限、耳鳴り、といったものです。多くの場合、症状や原因などで判断できますが、他の病気と区別するために画像検査(レントゲン)をすることもあります。

治療に関して、頚椎カラーを装着して安静にするほか、痛みを抑えるための薬物療法としてNSAIDsなども使用していきます。これらによって、患者様の多くは数週間程度で症状が軽減されるようになります。また症状が長期化していると、筋力トレーニングを中心としたリハビリテーションも行っていきます。

椎間板ヘルニア

椎骨と椎骨の間をつなぐほか、クッションの働きもする円形の軟骨組織を椎間板と言います。椎間板は、頸椎、胸椎、腰椎など、背骨の部分に存在しているものですが、加齢、あるいは激しいスポーツや重労働といったことによって一部の椎間板が変性することがあります。そして変性した椎間板は定位置から飛び出るなどして、脊柱管の中を通る脊髄や神経根が圧迫されるようになります。これによって生じる患部の痛みやしびれ、運動制限などの症状がみられている状態が椎間板ヘルニアになります。

背骨(脊椎)の部分であれば、どこの部分でも起きる可能性はありますが、人体の構造的に負担がかかるとされる頚椎(頸椎椎間板ヘルニア)と腰椎(腰椎椎間板ヘルニア)で起きることが大半と言われています。

頸椎椎間板ヘルニアの場合、頸部あるいは肩に痛みやこりを感じるほか、脊髄や神経根が圧迫されていると手全体や脚のしびれや麻痺、神経痛などの症状がみられるようになります。また腰椎椎間板ヘルニアでは、腰痛のほか、坐骨神経痛(脚の痛みやしびれ)が現れます。さらに病状が進行すると、歩行障害や感覚障害なども起きるようになります。

治療をする場合ですが、頸椎椎間板ヘルニアの患者様で首の症状を強く訴えている場合は、装具療法として頸椎カラー等を使用して首を固定していき、安静に努めます。また併せて薬物療法(NSAIDsなどの痛み止めの内服、神経ブロック注射)も用いるなどして痛みを緩和していきます。このほか、筋力の維持や痛みの増幅を抑えるために理学療法によるリハビリテーション(ストレッチや牽引療法 など)も行っていきます。

また腰椎椎間板ヘルニアの場合ですが、腰部をコルセットによって固定させて安静にする装具療法をするほか、痛みを訴えていればNSAIDSや筋弛緩剤といった薬物療法も行っていきます。痛みがさらに強いという場合は、神経根ブロック注射などを使用していきます。その後、痛みの症状が軽減されればリハビリテーション(理学療法)も始めるようにします。なお上記の保存療法だけでは改善が難しい場合は、手術療法による外科的治療(ヘルニア摘除術 など)となります。

腰部脊柱管狭窄症

主に加齢による腰椎の変性によって、脊柱管(神経の通り道)などが狭窄し、その中を通っている脊髄や神経根が圧迫されてしまうことで、足に痛みやしびれなどの症状が起きている状態を腰部脊柱管狭窄症と言います。加齢による腰椎の変性が原因であることが多いので、50歳以上の患者様が大半ですが、そのほかにも運動による酷使や別の脊椎の病気によって腰椎が変性する可能性もあります。

同疾患の患者様で多くの方が訴えているのが間欠性跛行です。この状態というのは、歩き始めはスムーズですが、歩き続けると臀部や足に痛みやしびれの症状がみられ、やがて歩くのが困難となります。しかし休みをとるなどすれば再び歩けるようになりますが、また痛みが出て歩けなくなります。これの繰り返しのことを言います。また腰椎の変性が馬尾神経を圧迫していると、しびれや灼熱感などの症状が両足や会陰部にみられるほか、場合によっては膀胱直腸障害がみられることもあります。このほか神経根が圧迫されていると、お尻の片側や足に疼痛の症状が見受けられるようになります。

治療に関して、基本は保存療法となり、コルセットを巻くなどの装具療法をはじめ、痛みの症状を抑える薬物療法(NSAIDs、プロスタグランジン製剤 など)やブロック注射(鼓膜外ブロック、選択的神経根ブロック)を行っていきます。保存治療だけでは症状がよくならない場合は、椎骨の一部を切断して脊柱管を広げていく手術療法が選択されます。